技術者の魂を込めて新たな価値を生む2017.04.21

株式会社モリタの前身は、かばんのパーツ類を製造していた会社の加工部門。分社化によって1982年に創業したが、初代社長と歩んだ険しい道のりを現社長の谷口啓志さんはこう振り返る。

「もともと加工会社といえば、メーカーの下請けのような立場。コストを削って一生懸命つくっても、より安く納める会社が現れると取引先は離れていく。もっと安い材料を仕入れて対抗しようと考えたこともありましたが、結局は負のスパイラルに陥るだけ。安物を追うことはやめようと決めました」

世間と同じことをしているだけでは買い叩かれると痛感し、価格競争から脱却するにはどうすればいいかと発想を転換。その答えが、高級バッグなどに使われる皮革類の加工に軸足を移すことだった。当初は慣れない天然素材の扱いに戸惑い、ときには失敗して代償を負うことも。それでも信念を貫いて試行錯誤を重ねた結果、国内外の高級バッグに使われる持ち手や革パーツの製造を任されるほど信頼は高まった。

「その気になれば国宝級のものをつくれないこともありません。ただし、それでは趣味の世界。少人数体制で数万点におよぶパーツをつくり、すべてに高い基準を満たすのが当社のモットーです」

高度な技術を支える秘密が、他社にない機械の開発だ。実は谷口さんは大手自動車メーカーのメカニック出身で、技術者としての目線が現場に活かされている。

「大量生産だけを目的にすると必ず負け組になってしまいます。だからこそ当社では職人の技を大切にしてきました。ただ、無理をすると身体に負担をかけすぎてしまうので、作業をサポートする道具をつくろうと考えたのです」

例えば革製の持ち手づくりの場合、一般的な方法で芯材に革を巻くと、曲げる加工をしたとき革の表面にしわが出て高級バッグにふさわしくない。革を強力に絞りながら巻き付けることが解決策だが、ペンチを使って人力で行うと1日30本もつくれば腕が悲鳴をあげる。そこで、エアーの力で絞る道具を発案し、鉄工所に特注でつくってもらうことに。必要な機能に特化することで既製品を買うよりもコストを抑えながら、製造の負担の大幅な軽減につながった。このほかクオリティの高い商品を安定して供給するため、必要な投資は惜しまない。

パーツ・革製品の加工で一定の成果をあげた谷口さんは、次のステップとして自社でかばんを完成まで仕上げる構想を描く。

「縫製ができる体制も15年ほど前から整えてきました。これまで培った革の加工技術と融合させ、納得できる独自のかばんをつくろうと動き出したところ。これからは若い世代に委ねていきたいので、ものづくりにプライドを持ってなんでも挑戦してほしい。ただし、やってみて失敗したから仕方ないというのでは遊んでいるのと同じ。失敗しても成功しても、常に検証して納得することが成長につながるんです」

高付加価値の商品を生む地盤を築いた谷口さんは、未来を担う新たな人材の台頭に期待を寄せる。

 

企業情報

株式会社モリタ
  • 住所〒668-0062 兵庫県豊岡市佐野81-6
  • 電話番号0796-24-1166
  • FAX番号0796-24-5432
  • 代表者氏名谷口 啓志
  • 創業昭和57年
  • 設立昭和62年
  • 主要業務皮革・共生地を使った鞄等のパーツ・ハンドルの加工製造
  • 従業員数18名

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