自社企画にこだわる創業100余年の老舗2017.05.08
メンズ系ビジネスバッグを主力として、カジュアルからトラベルまで各種バッグを幅広く取りそろえる平野株式会社は、大正2年(1913)に創業した製造卸の老舗。注文に応じた国内外ブランドのOEMも手掛けているが、あくまでも自社主導での企画・デザインを基本に展開している。
「現在、OEMは1割強です。他社と同じものをつくっているとどうしても価格競争に巻き込まれてしまうので、昔から自社のオリジナルバッグにこだわってきました」そう語るのは5代目社長の平野慎二さん。とはいえ、かばん業界も活況を呈したバブル期には、大口の注文が入る都市部の問屋のほうへ目が向きがちだったと振り返る。
「そのときには問屋さんからの要望どおりつくって収めるのが精いっぱいで、その先どこで売られているのかを把握できていませんでした。最終的にどういうお客さまが買ってくれているのか、どこを気に入っていただいたのか、どんな使い方をされているのか、まったく見えていなかったんです」当時の反省を踏まえ、従来のかばん専門の問屋や小売店にとどまらず多様な業種へ販売先を広げ、現在はネット通販などにも力を注ぐ。自社通販サイトとしては「鞄倶楽部」を立ち上げて、消費者へのダイレクトな販売を通じてユーザーとの距離を縮めることに軸足を移してきた。
一方で、営業担当者が取引先の声を聞きながら、細やかに商品企画するスタイルは一貫。社内の企画会議を通じてアイデアをブラッシュアップし、提携先のかばん職人と営業担当者がじか話をしながら理想の形へとつくり上げていくのが、平野の持ち味といえるだろう。「当社のかばんをつくっていただいている職人さんやメーカーさんは、豊岡市内を中心として各地にたくさんおられるので、つくりたいかばんのタイプに応じて最適な依頼先を選んでいます。営業担当者が直接交渉することで意図が伝わりやすく、より速やかに商品を開発できるほか、製造現場の声を聞くことで営業担当者自身の勉強にもなるんです。だから当社では企画だけの担当者は置いていません」こうして完成する平野のかばんは、ユーザーの使い勝手に配慮した実用性を主体とし、そこにデザイン性を加えるという発想が特徴だ。
「多様な品ぞろえも当社の強み。私たちだけでなく先輩方が少しずつ積み上げてきた財産を引き継ぎながら、新しい商品を生み出してくれる人材を求めています。失敗してもへこむことなく、また次へ気持ちを切り替えられる精神的タフさも必要でしょう。方向性に明らかな間違いがあれば軌道修正するのが私の役割ですが、基本的にはどんどん挑戦したらいい世界だと思っています」。
そんな寛容な社風をベースに世に送り出してきたオリジナルバッグは、現在販売中のものだけでおよそ700アイテムにおよぶ。新たなニーズに応える商品はもちろん、なかにはアタッシェケースやスピードケースなど、数十年にわたって同じ型で売れ続けているロングセラーも少なくない。
企業情報
- 平野株式会社
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- 住所〒668-0013 兵庫県豊岡市中陰399-8
- 電話番号0796-23-0010
- FAX番号0796-24-2724
- 代表者氏名平野 慎二
- 創業大正2年
- 設立昭和28年
- 主要業務鞄製造卸
- 従業員数36名(パート含む)