高次元の“らしさ”がにじむ商品づくり2017.06.01

かばんの製造卸業を営む株式会社井戸は、今でこそ立派な社屋が目を引くが、50年余り前の創業当初、家族経営の小さな会社に過ぎなかった。その当時のことを、社長の井戸督さんはこう語る。

「両親と叔父の3人で切り盛りしていて、豊岡のかばんメーカーの企画商品を取引先へ卸す仕事をしていました。そこへ僕が東京から帰ってきて手伝うようになったのが、30年ほど前のこと。いざ自分たちで企画してかばんをつくってもらおうと思っても、どのメーカーも景気が良かった時代で、うちのような零細企業は相手にしてもらえません。それなら自分たちでつくってみようということになったんです。とはいえ、かばんに関してはまったくの素人。両親らにも縫製などの技術はなく、まずは知り合いの職人さんの作業を見て、独学で一から実践することから始めました」



ひたすら「いいものをつくりたい」という一心で努力を重ね、革の加工や裁断などの腕を磨くうち、クオリティの高いかばんの企画・製造ができるまでにスキルアップ。しだいに取引先も広がり、外注先に手伝ってもらいながら着実に実績をあげていたところ、大手ブランドからOEM生産の話が舞い込んだ。

「そこから生産量を徐々に拡大していきました。現在では数社の会社を柱にしてOEM生産を主体に手掛けています。価値観を共有し、同じ目線でのモノづくりが出来なければ長続きしませんから簡単に取引先を増やすことは出来ません。」
自社ブランドは今のところ持っていないが、「メイドイン豊岡」「メイドインジャパン」のメーカーとして常にトップランクの商品を提供し続けていれば、将来的に自社ブランドを手掛けたとしても必ず生き残れると井戸社長は見る。



「たとえOEM商品でも、当社でしかつくれない技術は少なくありませんから。高級セレクトショップや百貨店に並んでも耐えうる、味のある商品が当社の持ち味です。かばんとしての完成度の高さは当たり前で、プラスαの要素にこそ“らしさ”が現れるはず。できたかばんを見ていただけばわかるというのが当社のスタンスです」

妥協のない丁寧なものづくりの姿勢は、社屋を見渡しても一目瞭然。顧客を招く応接室にはセンスの良い家具が置かれ、14回の清掃を日課にして全フロアとも常に美しく保つ。そして終業時間の夕方6時になれば、きっちりとその日の業務を終える。これらすべてに意味があると井戸社長は言う。



「整理整頓されていない場所でいいものはつくれませんし、若い人たちに夢を持っていただくことも大切なことです。その環境がここには整っています。ファッションが好きで、ものづくりに喜びを感じ、絶えず向上心を持って取り組める人に、ぜひ活躍していただきたいですね」

 

企業情報

株式会社井戸
  • 住所〒668-0025 兵庫県豊岡市幸町1-25
  • 電話番号0796-22-6227
  • FAX番号0796-24-2520
  • 代表者氏名井戸 督
  • 創業昭和38年
  • 設立平成11年
  • 主要業務鞄製造
  • 従業員数30人

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