創業190余年の伝統を継ぎながら躍進2017.06.20

柳行李の商いから始まったエンドー鞄株式会社は、文政7年(1824年)に創業した業界一の老舗。昭和初期に豊岡でファイバーかばんが開発されるといち早く扱うなど、日本最大のかばん産地の発展を常に牽引してきた。一方で、こんな問題も抱えていたと8代目社長・遠藤玄一郎さんは語る。

「私が若い頃は、何か新しいことをしようと意見すると『今までこうしてきたから』という旧態依然とした風潮があり、どこかで変えなければいけないと感じました。それ以来どうすればお客さまや会社のためになるかという物差しでいつも考えています」



鞄一筋の基本姿勢を貫きつつ、伝統にとらわれない新しい挑戦へも意欲的。自社オリジナルブランドの比率を高めるべく、商品開発にも早くから力を注いできた。

「自分が欲しいものという観点から、ポケットが内部にたくさんあるバッグをつくろうと思いついたんです。当時のかばん業界は見た目のデザインを重視する傾向が強く、わざわざ生産性が低い商品をつくる会社はありません。実際に販売してみるとユーザーからの評価が高く、最終的に200万本以上を売るヒット商品になりました」
以来、かばんは“日常的に使う道具”という発想のもと、機能性をものづくりの原点として守り続ける。静音キャスター付きのスーツケースも、そんな思いが具現化したロングセラーのひとつ。早朝や深夜のキャスター音が気になるというユーザーの悩みと真剣に向き合った結果、価格が多少高くても市場に受け入れられた。



新たな試みとしてオープンしたのが、工房とショップの一体型店舗「嘉玄(Kagen)」。同店オリジナル商品の企画から製造までを一貫して行い、かばん職人自身が商品をユーザーへ直接販売する。
「創業200年へと向かうなか、我々がどういう会社であるべきか議論した結果、豊岡に軸足を置いた国産のしっかりとしたものづくりへシフトしていこうとなりました。その象徴となる拠点が『嘉玄』です。モノづくりへの思いが強かった亡き父の名・嘉吉郎と私の玄一郎から1文字ずつ取って命名しました」



店舗の2階では、柳行李や行李かばんをはじめ、豊岡のかばん業界の歩みを物語る商品を展示。気軽に立ち寄れる資料館としても機能し、近隣の「カバンストリート」やかばんの神様「柳の宮神社」と併せて、かばんのまちを盛り上げる一端も担う。

「今後やりたいのは柳のトランク。明治から大正にかけて柳を編んでいた機械の図面が残るので、なんとか復活させたい。そうすれば杞柳製品からファイバーかばん、現在の縫製に至るまで全商品をカバーできますから。長年かばんを生業にしてきて、守るべき技術を伝えていくのも老舗の務めだと思います」
これら幅広く手掛けるエンドー鞄だからこそ、求める人材についても固定の枠にとらわれないが、「まずはモノに対する何らかのこだわりを持つ人が前提ですね」と遠藤社長。たとえ畑違いからの転職者のアイデアであっても、面白ければむしろ積極的に取り入れる社風がここにはある。

企業情報

エンドー鞄株式会社
  • 住所〒668-0026 兵庫県豊岡市元町10-2
  • 電話番号0796-22-7156
  • FAX番号0796-24-1296
  • 代表者氏名遠藤 玄一郎
  • 創業文政7年
  • 設立昭和40年
  • 主要業務鞄製造卸
  • 従業員数55名

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